映画「his」|パンフレットで何度も反すうしたくなる良作

映画「his」観てきました 観劇あれこれ

映画「his」を神戸シネ・リーブルさんにて見てきました。

 

おたまま
おたまま

こちらのサイトは舞台関連の話がメインですが、やはり俳優沼の住人ですので、ご贔屓の俳優さんが出演されている映画は、時間が許す限り観に行っています。

 

今回は宮沢氷魚くんが観たくて行った映画なのですが、「氷魚くんかっこいいなぁ~」なんて浮かれた気持ちで観にいった私ですが、浮ついた気持ちなんて映画が始まってすぐに、どっかに置き忘れて映画の世界に惹き込まれていました。

(とはいえ、ご贔屓俳優さんきっかけで映画館に足を運び、素晴らしい作品と出会えるのだから、俳優沼はやめられない。)

 

とにかく、映画を観た自分の今の気持ちを、出しきってまとめておきたいと思うほど、色んな感情や考えが噴き出す素晴らしい映画だったので、自分の備忘録として、映画の感想(ネタバレなく頑張ります!)をまとめていきたいと思います。

 

映画「his」はパンフレットで何度も反すうしたくなる良作(感想)

感想を書く前に、1つだけ言いたいことがあります。

それは、「パンフレットは買っておいたほうがいいよ!」です。

 

映画のパンフレットって「映画がよかったら買おうかな?」という方が多いかと思います。

(俳優沼の住人は、「推しが写っている=即買う」なので余程共感できない作品でない限りは買います 笑)

ですが、今回の映画「his」は買ったほうがいいとプッシュしておきます。

 

 

売り切れの館が続出しているので後から欲しいと思っても手に入らない可能性があることもそうですが(2/12現在、神戸シネ・リーブルさんでは買えました)、とにかく俳優、監督、企画・脚本をされた方のインタビューが濃くて、読み応え抜群です。

 

また、合同会社Juerias LGBT Wedding共同代表、LGBTコミュニティ江戸川副代表で、ご自身も愛するパートナーと夫夫(ふうふ)として生活されている七崎良輔さんが寄稿されています。

リアルな声であるからこそ、読むたびに映画を反すうし、これから「どんな社会ならみんなが幸せだと感じながら生きていけるのか?」について思いを巡らせてしまいます。

 

関連ページ 七崎良輔さんのオフィシャルページ

 

映画「his」あらすじと感想

ここからは、ネタバレができるだけないように、あらすじや感想を書いていきます。

 

人によってはネタバレと感じる部分もあるかもしれません。まだ観ていない方で、絶対にネタバレしたくない人は、観終わってから読んでいただけると嬉しいです。

 

映画「his」あらすじ

会社や身近な人に自分がゲイだと知られるのを恐れ、岐阜県白河町という田舎の村に移住する迅(しゅん)。

ゲイである本当の自分を出すことを恐れるあまり、村の人との交流はほとんどせず、ほぼ自給自足で生活していた。

 

そこに8年ぶりに、高校生の頃に付き合い、深く愛し合っていた元彼の渚(なぎさ)が子供の空(そら)を連れてやってくる。

最初は頑なに受け入れまいと拒んでいた迅だが、一緒に生活していく中で、空のことを気に掛けたり、蓋をしていた渚への気持ちを必死に抑えていた。

 

最初こそ拒んでいた迅も、渚や空との3人の生活を愛おしいものと感じ始めていた矢先、渚の妻:玲奈が空を無理やり連れて帰ってしまった・・・

(ここから先は、劇場でお楽しみください。)

 

映画「his」感想

ここからは、映画を観た私の感想を綴ります。

どうしても感想を述べる上で、一部ネタバレになる部分があります。絶対ネタバレなしで観たい方は、観た後に感想を読んでいただけると嬉しいです。

 

同性であるが故に周りからの目が気になり別れた2人が再会し、また恋に落ち、なんだかんだあったけど、一緒に暮らすことができて「めでたし、めでたし」というような、手垢のついた話ではない。

このhisという映画では「めでたし、めでたし」のその先までも、真摯に向き合い大事な決断をしていく生々しい人間臭い様子も描かれていきます。

見た目や入り口は同性愛云々についての話のようだけれども、出口はもっとリアルに元夫婦と夫夫が「家族の在り方」を模索していくお話でした。

 

普通って何?

自分自身に対しても、他人に対しても、人はラベルを貼ってしまいます。

瞬時に分かりやすく「その人」を識別するために、人は良くも悪くもラベルを貼る。

そして、その貼ったラベルに対して、「普通」という人によって曖昧な基準なのに、その基準の上からはみ出ないことを求めてしまいます。

 

この映画「his」でも【普通の】とか【一般的に】とか【ごく標準的な】という、普通という基準からはみ出さないことを求めるシーンが沢山でてきます。

男女が恋愛するのが【普通】、父母で子供を育てるのが【ごく標準的な】家族の姿、【一般的に】父親が働き母親が家事と子育てを担うなど・・・

 

映画を観ながらずっと【普通】って何だろう?と思っていました。

私の普通とあなたの普通が一緒とは限らない。

むしろ、一緒であることなんて無い、それぞれが、それぞれの普通を持っています

 

「パパは迅くんが好き、迅くんもパパが好き、どうしてそれがいけないの?」と澄んだ瞳で問う空ちゃんの言葉を聞くと、そこからは【普通】という曖昧なものさしは登場しません。

(セリフは正確ではないかもしれませんが、こういうニュアンスのセリフでした。)

ただ、お互いが好きで大切に思っている事実が大切という、何の制限も無いシンプルな意見だ。

もちろん現実の世界では、法的な整備や行政の制度など、単純に「好き」の気持ちだけでは、どうにもならないことがある。

でも、この法整備も行政の制度も、旧来から脈々と続く【普通】という曖昧なものさしの上に考えられたもの。

もしかしたら、空ちゃんのように、旧来からの【普通】に染まっていない感覚をもった人間が増えれば社会の【普通】も変わるし、他者と自分の違いをフラットな目で受け入れられる世の中になるかもしれない。

そういった人がどんどん増えていけば、今のままならない法整備や行政制度もいつか変わるかもしれない。

 

急激な変化はすぐには難しい。

けれど、「見てみぬふり」や「無関心」ではなく、まずは「見て知る」こと、そして自分との違いに対する「寛容さ」が社会には必要だと感じました。

個人的には、子供に聞かせるおとぎばなしに、色んな愛の形が描かれるようになったらいいな、なんて思ったりします。

いつだって恋に落ちるのは、王子様とお姫様。

王子様と王子様が恋に落ちてもいいし、お姫様とお姫様が幸せに暮らしましたとさ、というお話があってもいいと思う。

 

いろんな社会問題を感じられる作品

この映画は2人の男性の人生を軸に、LGBTQ、毒親、親権の問題、働き方の問題(女性の働き方、男女問わない子育てと両立が難しい労働環境)など、現代社会が抱えている色んな問題を、1つ1つの例として分かりやすい形でみせてくれます。

 

そのどれに対しても、映画の中ではいい・悪いのジャッジをするのではなく、ありのままの問題の姿をみせてくれます。

だからこそ、観終わった時、「あなたはどう感じましたか?どうしたらいいと思いますか?」と問われているようでした。

 

ゲイに対して社会の目がもっと優しかったら、渚だってもしかすると迅とずっと一緒にいたかもしれない。

自分を普通らしくするために、ごまかして家庭をつくらなくても済んだかもしれない。

 

空ちゃんの母親である玲奈が母親として、「仕事・家事・育児を両立できるのか」と法廷で責められる様子は、聞いていて胸が痛かったです。

もちろん1人親になって、今のペースでは子育てと仕事の両立は難しいかもしれないが、玲奈が仕事をして今まで一家を支えていたことは間違いないことで、そこを責めるのは残酷だと思いました。(だからこそ、渚はあの決断をしたんだろうな。)

家族の生活を成り立たせるため仕事は必要だけれど、男女に限らず、時間の拘束の仕方や仕事の依頼の仕方など両道環境を見直すべきではないかなと感じた。

 

そして、空ちゃんの、「パパとママと迅くん、みんなと一緒にいたい」という希望が切なく響きます。

私には同世代くらいの娘がいるので、つい親目線でみてしまうから、空ちゃんの幸せを願わずにいられなかった。

家族の形、とくに、親権のあり方についても、どちらかではなく共同で持つことはできないのかなと思ってしまいました。

(もちろん、モラハラやDVなど共同で親権を持たせてはいけない場合もあると思いますが)

そうすれば、ママとも家族だし、パパ&迅くんとも家族というような気持ちで空ちゃんも過ごせるかもしれない。

そうすることで、毒親である玲奈の母親に頼らず、渚のサポートを受けながら玲奈も働き続けられる道がみつかるんじゃないかと思う。

(もちろん一緒に住むなんてできないけれど、近くに住んだり、離れていても長期で任せる時期を作ったり、その時々の事情に合わせて空ちゃんを育てあうこともできるかもしれない。)

家族の形も、関わる人たちみんなが納得する形であれば、「構成や住んでいる場所・過ごす時間の長さとは関係なく等しく家族である」とすることが、相応しい姿なんじゃないかとも感じました。

大人の都合ではなく、子供の気持ちを優先した家族の形を作れる、法整備や行政整備ができたらいいのになと思う。

 

恋は二人の関係だけで秘めたままでも維持できるけれども、そこから人生のパートナーとして歩んでいくとなると、互いの両親、親族、友人、また会社や学校など地域社会との繋がりが必要で、当人2人の気持ちだけでは完結できない人間関係を持たざるを得ない。

だからこそ、いろんな人生を歩む家族の形を優しく包み込む社会になってほしいなと思う。

 

長々と語ってしまいましたが、以上が映画「his」を観てパンフレットを読んで感じたことです。

もっと何回もみたい!観るたびに色んな感想や感情が噴出しそうです。

 

映画「his」の前段の話として ドラマ版あり! dTVで配信

映画hisには、実は前段となる物語があります。

それは、2019年メーテレの深夜枠で放送されていた「his〜恋するつもりなんてなかった〜」です。

 

映画「his」の13年前の話で、高校性の迅と渚が出会い友情を育み、恋にまで発展していくお話しなのだそう。

 

おたまま
おたまま

メーテレとテレビ神奈川でしか放送が無かったので、見れておりません・・・

えっ・・・これ、見たい、見たい、見たい、見たーーーい!!!

 

配信はdTVのみで、現在も配信されているようです。

おたまま、dTVは登録したことが無いので、(30日間のお試しもあるので)一度登録してみたいと思います。

 

登録して見たら、また感想をレポートできたらなと思っています。

タイトルとURLをコピーしました